反陽子減速器 AD反物質や反陽子原子のような物質と反物質の束縛系を作り出し、その性質を研究するには低速(低エネルギー)の反陽子が必要となります。 低速の反陽子を作り出すのは簡単なことではありません。 なぜなら、反陽子を作るには、陽子との対生成によって生成するしかありませんが、 有名な E=mc2 の式から導かれるように陽子と反陽子の静止質量分のエネルギーをどこかから与えなくてはなりません。 この大きなエネルギーを得る為に、CERN (セルン)では、 シンクロトロンからの 26GeV/c の陽子ビームをイリジウム標的に衝突させ、 p + p → p + p + p + p
という反応で反陽子を生成しています(相手が中性子 n でも同様)。
こうして生成された高いエネルギーの反陽子を
反陽子減速器(Antiproton Decelerator, AD)のリング内に導入しています。そして減速と冷却を繰り返しておよそ約 3000 万個の反陽子を 100 秒に一度、5.3MeV
のエネルギー、150ns 程度のパルス幅の「低速」ビームとして実験施設に供給しています。
このCERN の AD は、低速反陽子を供給する世界で唯一の施設となっています。
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