各国の研究者からなる ASASUCA のなかで、私たちは東大
駒場と理研を中心として MUSASHI (ムサシ)というサブグループを構成しています。(MUSASHI のメンバー)
MUSASHI とは Mono-energetic Ultra-Slow Antiproton Source for High-precision
Investigations と名付けられた私たち独自の装置(「超低速反陽子源」)であると同時に、
そこから得られる超低速反陽子を用いた実験的研究を進めている私たちのグループ名でもあります。
図 3: 反陽子トラップと輸送ビームラインからなる MUSASHI。奥に RFQD、MUSASHI の下流に実験槽を接続している。
反陽子原子や反水素原子といったエキゾティック原子は化学的なエネルギー領域、即ち eV 程度以下で効率的に合成ができます。
その為の道具立てとして、私たちが開発してきたのが、MUSASHI です。
これは大量の反陽子を蓄積し冷却できるトラップと、そこから反陽子を超低速ビームとして引き出す輸送ビームラインからなり、AD と RFQD という線型の高周波四重極減速器と組合せることで最高レベルの反陽子蓄積効率を誇ります。
これまでに 1000 万個(107 個)の反陽子の蓄積・冷却に成功しています。
心臓部である反陽子トラップは、ペニングトラップ(Penning trap)と呼ばれる静電場と静磁場の組合せによるイオントラップの一種ですが、多重化した円筒状電極で調和型の静電ポテンシャルを形成することで、多数の荷電粒子を非中性プラズマとして安定に閉じ込められるように開発されたものです。
これを MRT (Multi-Ring electrode Trap, 多重電極トラップ)などと呼んでいます。
反陽子はこのトラップ内に導入された後、予め閉じ込められていた電子プラズマとクーロン散乱を繰り返します。
この時トラップは 2.5T の強磁場中に設置されていることから電子はシンクロトロン放射によって自動的に冷却され、結果として反陽子は徐々にエネルギーを失なって 30 秒程度で環境温度まで冷却されます(電子冷却)。
こうして冷却された反陽子はトラップのポテンシャルの底に雲となって蓄積されます。
MUSASHI ではこの反陽子雲に高周波を印加して動径方向に絞った後にポテンシャルの底をゆっくりと持ち上げて反陽子を超低速ビームとして順次引き出しています。
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