GBAR 実験による弱い等価原理の検証

弱い等価原理

等価原理と呼ばれるものには、幾つかの表現がありますが、GBAR 実験をはじめ反物質を用いた重力加速度の測定は、弱い等価原理 (Weak Equivalence Principle) の検証に相当します。地球という物質と反水素原子という反物質の間に働く重力加速度を測定することになります。これによって弱い等価原理の示す、自由落下する質点の軌道が初期位置と速度のみに依存してその種類によらない、という命題を反物質においても成り立つかを実験的に検証できます。

反水素原子は、近年の実験の進展により、その運動を制御して磁気瓶に閉じ込めたりビームとして取り出すといったことが行われるようになってきています。これまで陽電子プラズマと反陽子プラズマを混合して、反陽子と陽電子二つの三体再結合過程から反陽子と陽電子の束縛状態である反水素原子が合成されてきました。しかし、多くの反水素原子は冷えていても数 K から百 mK 程度の温度であることが多く、これを自由落下させようとしても熱運動によって飛び散り、真空槽の内壁に衝突してしまうことが予想されます。

GBAR 実験では、ポジトロニウムとの荷電交換反応を用いて反水素イオンを生成し、その反水素イオンを RF トラップに導入して冷却します。その後、レーザーで余分な陽電子をはがした上で自由落下させる実験を準備しています。電荷を帯びた状態にすることで、Be+ イオンとの共同冷却で10 μK 程度まで冷却できると考えています。これによって重力加速度を 1% 程度の精度で測定することが可能となると見積られています。


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