東京大学教養学部前期課程:2013年度 冬学期
主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
担当教員(東京大学教養学部):鳥居寛之(粒子線物理学)・小豆川勝見(環境分析化学)・渡邊雄一郎(生命環境応答学)
ゲスト講師:坪倉正治(被曝調査・医療支援)・飯本武志(放射線防護学)・藤原徹(植物栄養・肥料学)
対象:東京大学教養学部 1年・2年、理科・文科。 単位:2単位(成績評価:出席とレポートで合否判定)
毎週金曜5限。講義完了。
準指定教科書として、2011年度のテーマ講義を元に担当教員が共同で執筆した以下の新刊書籍の購入をお薦めします(第3刷を推奨)。なくても分かるように講義しますが、授業の深い理解やレポート課題の検討に役立てて下さい。
書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」
(丸善出版:初版2012年10月;第3刷2013年6月)
目標概要:
東日本大震災および福島第一原子力発電所事故は、われわれ日本人に大きな衝撃と 影響を与えました。事故にともなって大量の放射性物質が広い地域にばらまかれ、深刻な環境汚染を引き起こしています。放射線による人体への影響については、専門家の間でも意見が分かれ、混乱を助長してしまいました。わが国でこれまで放射線の基礎的知識に対する教育が十分になされてこなかったことによる科学的リテラシーの欠如に加えて、リスクを人々にどう伝えるかというリスクコミュニケーションの社会論的問題も浮かび上がりました。
放射線を理解するには、物理・化学・生物学・医学・工学など様々な分野の知識が必要となり、全てを網羅することが難しいことは確かです。 大学においても、広く一般の学生が系統立って学べる機会は少ないのが実情です。
今期で3回目となる冬学期のテーマ講義は、好評だった過去2回を踏まえ、教養学部の3人の教員:鳥居・小豆川・渡邊を中心に、他学部からも各方面でご活躍のゲスト講師を招いて、広く体系的に、放射線に関する科学的知識を身につけ、定性的および定量的に正しく判断する能力を養うことを目的とします。
講義は理科生を主な対象としますが、意欲のある文科生も歓迎します。
日時:金曜5限 (1/27 は月曜だが振替日)
場所:駒場キャンパス
講義内容:
- 10/11 【鳥居・小豆川・渡邊】ガイダンス、【鳥居】放射線入門(放射線とは、身の回りの放射線)
- 10/18 【鳥居】放射線物理学(放射性崩壊と放射能、放射線と物質の相互作用)
- 10/25 【小豆川】放射線計測学(放射線の測定原理・方法・問題点)
- 11/ 1 【鳥居】放射線物理学・放射線化学(物質中でのエネルギー損失過程、放射線の単位)
- 11/ 8 【渡邊】放射線生物学(放射線の細胞および生体への影響)
- 11/15 【坪倉正治:医科学研究所】被曝調査・医療支援(福島事故後の内部被曝の現状、現場での医療支援)
- 11/29 【鳥居】原子核物理学・原子力工学(原子核模型と核構造、核崩壊と核分裂、原子力発電の原理)
- 12/ 6 【小豆川】環境放射化学(放射線量の時間変化、放射性物質の濃縮と拡散)
- 12/13 【小豆川】環境放射化学(現在の事故状況と今後の放射線量)
- 12/20 【飯本武志:環境安全本部】放射線防護学(放射線防護の考え方と実社会への適用)
- 1/10 【藤原徹:農学部応用生命化学】植物栄養・肥料学(放射性物質と農業)
- 1/24 【渡邊】放射線の利用(育種、滅菌、工学応用など)
- 1/27 【鳥居】加速器科学(人工の放射線)、まとめ(線量評価とリスクコミュニケーション)
講師紹介:
- 鳥居 寛之(東京大学教養学部物理部会):専門は粒子線物理学・原子物理学。加速器施設にて反陽子やミューオンビームを使った基礎物理学の実験研究をしている。駒場前期教育では、基礎物理学実験を担当。特に物理実験学入門講義&実習の総責任者。震災直後に自主講義「放射線学」を立ち上げ、その後、正課のテーマ講義シリーズとして発展させた。各地で学生向け講義や一般向け講演活動を行っている。第1種放射線取扱主任者。
- 小豆川 勝見(東京大学教養学部化学部会):専門は環境分析化学。原発事故以来、福島に頻繁に出張して土壌中の放射性核種を同定したり、市民講演会で講師を務めるなど奔走している。駒場前期教育では、基礎化学実験を担当。岩波「科学」の連載を始め、執筆記事多数。
- 渡邊 雄一郎(東京大学教養学部生物部会・教養教育高度化機構):専門は生命環境応答学。植物が環境の変化に適応する機構についての遺伝子研究。生命科学や植物学を講義している。放射線取扱主任者として、駒場キャンパスにおける放射線同位体施設の管理総責任者。
- 坪倉 正治(東京大学医科学研究所):医師として毎週福島に出向き、南相馬病院を拠点に医療支援に奔走して現場の住民に向き合っている。また、事故による内部被曝の実態を調査するとともに、現地にて放射線の講演会活動にも力を入れる。こうした社会貢献により、第1回「明日の象徴」賞を受賞。朝日新聞の医療サイト「アピタル」連載を始め、精力的に情報発信を行い、マスコミにも何度も取り上げられている医学系若手研究者。
- 飯本 武志(東京大学環境安全本部):専門は放射線防護学。環境放射線(放射能)測定、線量評価に関する研究に従事。東京大学全体の放射線管理と安全にかかる実務とりまとめを担当。内閣府、文部科学省、環境省、経済産業省などの専門委員会等で、放射線防護分野の専門家として委員等を歴任。学校教育における放射線教育や教員育成にも力を注ぐ。今年度夏学期学術俯瞰講義「物質の神秘」での講義に引き続き、原発事故以来社会的関心事となっている放射線防護の理念と実践について、詳しく解説する。
- 藤原 徹(東京大学農学部応用生命化学):専門は植物栄養・肥料学。放射性物質のセシウムが土壌からいかに植物へ吸収されるかという話から、原発事故が引き起こした農業への影響と対策について考える。
関連講義 ★ 2012年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
関連講義 ★ 2011年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
関連講義 ★ 2011年度夏学期:自主講義「放射線学」(鳥居寛之)
関連書籍 ★ 書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎 著、中川恵一 執筆協力) 丸善出版
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総括担当教員(鳥居)への問い合わせ先
電子メイル torii-radio@radphys4.c.u-tokyo.ac.jp
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Last modified on 2014/1/27