東京大学教養学部前期課程:2012年度 冬学期
主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
担当教員(東京大学教養学部):鳥居寛之(粒子線物理学)・小豆川勝見(環境分析化学)・渡邊雄一郎(生命環境応答学)
ゲスト講師:作美明(放射線医療)・森口祐一(環境システム工学)・藤垣裕子(科学技術社会論)・藤原徹(植物栄養・肥料学)
対象:東京大学教養学部 1年・2年、理科・文科。 単位:2単位(成績評価:出席とレポートで合否判定)
毎週金曜5限。講義完了。
場所:21 KOMCEE(理想の教育棟)4階 K402 教室
準指定教科書として、昨年のテーマ講義を元に担当教員が共同で執筆した以下の新刊書籍の購入をお薦めします。なくても分かるように講義しますが、授業の深い理解やレポート課題の検討に役立てて下さい。
書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」(丸善出版:2012年10月)
目標概要:
昨年3月に日本を襲った大災害は、われわれ日本人に大きな衝撃と影響を与えました。福島第一原子力発電所の事故にともなって、大量の放射性物質が東日本一帯を中心とする広い地域にばらまかれ、深刻な環境汚染を引き起こしています。放射線による人体への影響については、専門家の間でも意見が分かれ、放射線に対する恐怖を訴える人々の反応がみられました。わが国でこれまで放射線の基礎的知識に対する教育が十分になされてこなかったことのつけが、科学的リテラシーの欠如となって表れてしまいました。
放射線を理解するには、物理・化学・生物学・医学・工学など様々な分野の知識が必要となり、全てを網羅することが難しいことは確かです。 大学においても、広く一般の学生が系統立って学べる機会は少ないのが実情です。
このテーマ講義は、好評だった昨年度に続き、教養学部の3人の教員:鳥居・小豆川・渡邊を中心に、他学部のゲスト講師も招いて、なるべく広く体系的に、放射線に関する科学的知識を身につけ、定性的および定量的に正しく判断する能力を養うことを目的とします。講義は理科生を主な対象としますが、意欲のある文科生も歓迎します。
日時:金曜5限 (11/20 は火曜だが振替日)
場所:駒場キャンパス 21 KOMCEE(理想の教育棟)4階 K402 教室
講義内容:
- 10/12 前半ガイダンス、後半【鳥居】放射線入門(放射線とは、身の回りの放射線)
- 10/19 【鳥居】放射線物理学(放射線の物質の相互作用、エネルギー損失過程)
- 10/26 【小豆川】放射線計測学(放射線の測定原理・方法・問題点)
- 11/ 2 【小豆川】環境放射化学(放射線量の時間変化・濃縮と拡散)
- 11/ 9 【渡邊】放射線生物学(放射線の生体への影響、放射線防護の考え方)
- 11/16 【作美明:医学部附属病院放射線科】放射線医療 (診断・がんの放射線治療)
- 11/20 【鳥居】原子核物理学・原子力工学(原子核と放射能、核崩壊・核分裂、原子力発電の原理)
- 11/30 【森口祐一:工学部都市工学】環境システム工学(環境汚染・廃棄物問題)
- 12/ 7 【藤垣裕子:教養学部広域システム】科学技術社会論(科学コミュニケーション、リスク論)
- 12/14 【小豆川】環境放射化学(シミュレーション・今後の放射線量)
- 12/21 【藤原徹:農学部応用生命化学】植物栄養・肥料学(放射性物質と農業)
- 1/11 【渡邊】放射線の利用(育種、滅菌、工学応用など)
- 1/25 【鳥居】放射線防護学(線量評価)、加速器科学(人工の放射線)
講師紹介:
- 鳥居 寛之(東京大学教養学部物理部会):専門は粒子線物理学・原子物理学。加速器施設にて反陽子ビームを使った基礎物理学の実験研究をしている。駒場前期教育では、基礎物理学実験を担当。特に物理実験学入門講義&実習の総責任者。本テーマ講義は2011年度夏学期に開講した自主講義「放射線学」が発端。各地で講演会を開く。2012年3月には震災がれき処理のプロジェクトにも参加・監修した。
- 小豆川 勝見(東京大学教養学部化学部会):専門は環境分析化学。原発事故以来、福島に頻繁に出張して土壌中の放射性核種を同定したり、市民講演会で講師を務めるなど奔走している。駒場前期教育では、基礎化学実験を担当。
- 渡邊 雄一郎(東京大学教養学部生物部会・教養教育高度化機構):専門は生命環境応答学。放射線取扱主任者として、駒場キャンパスにおける放射線同位体施設の管理総責任者。
- 作美 明(東京大学医学部附属病院放射線科):工学博士、医学物理士。中川恵一先生を中心とする team nakagawa の一員として、放射線がん治療に当たっている。
- 森口 祐一(東京大学工学部都市工学):専門は環境システム工学。環境汚染の専門家として、除染や震災がれき処理問題についてお話し頂く。
- 藤垣 裕子(東京大学教養学部広域システム):専門は科学技術社会論。大学院生向け副専攻科学技術インタープリター養成プログラムの教員も務める。今回の原発事故のようなシビアアクシデントについて、科学はどう向き合い、また人々に科学的知見やリスクを伝えていくべきなのか、社会学の立場からお話し頂く。
- 藤原 徹(東京大学農学部応用生命化学):専門は植物栄養・肥料学。放射性物質のセシウムが土壌からいかに植物へ吸収されるかという話から、原発事故が引き起こした農業への影響について考える。
関連講義 ★ 2013年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
★ 2011年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
★ 2011年度夏学期:自主講義「放射線学」(鳥居寛之)
関連書籍 ★ 書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎 著、中川恵一 執筆協力) 丸善出版:2012年10月10日刊行!
関連トップ ★ 東大教養:鳥居の放射線講義関連のトップページに行く
総括担当教員(鳥居)への問い合わせ先
電子メイル torii-radio@radphys4.c.u-tokyo.ac.jp
このページの URL: http://radphys4.c.u-tokyo.ac.jp/~torii/lecture/radiolect12W.html
Last modified on 2014/1/22