書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」
鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎 著、中川恵一 執筆協力
丸善出版:2012年10月10日刊行
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東京大学教養学部前期課程:2011年度冬学期
主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
担当教員(東京大学教養学部):鳥居寛之(粒子線物理学)・小豆川勝見(環境放射化学)・渡邊雄一郎(生命環境応答学)
ゲスト講師:中川恵一(放射線医療)・石渡祐樹(原子力工学)・藤原徹(植物栄養・土壌肥料学)
対象:東京大学教養学部 1年・2年、理科・文科。 単位:2単位(成績評価:出席とレポートで合否判定)
毎週金曜5限。講義完了。
目標概要:
原子力発電所の事故以来、環境中の放射能汚染について、また放射線量について、連日報道されてきた。放射線による人体への影響について、専門家の間でも確定的なことが言えず意見が分かれたことや、そもそも国や電力会社の発表に対する不信感が広がったこともあって、半ばヒステリックなまでに放射線に対する恐怖を訴えるといった反応も見られた。メディアでも度々特集を組んで解説がなされたが、なかには記者自身がよく理解しないまま不安を煽るような記事が掲載されることも多く、必ずしも国民一人一人が納得して正しい科学的知識を身につけたか疑問である。これまで30年以上にわたって、放射線の基礎的知識に対する教育が十分になされてこなかったことのつけが、科学的リテラシーの欠如となって表れている。
放射線を理解するには、物理・化学・生物学・医学・工学など様々な分野の知識が必要となり、全てを網羅することが難しいことは確かであり、それはテレビに登場した専門家が様々な分野にわたったことからも窺える。大学においても、系統立った授業が行われているのは一部の医学系学科や放射線技師養成科などに限られ、一般の学生が学べる機会は少ない。
今回のテーマ講義は、夏学期に鳥居が開講した自主講義「放射線」を発展させ、教養学部の3人の教員:渡邊(生命環境応答学)・小豆川(環境放射化学)・鳥居(粒子線物理学)を中心に、学内外のゲスト講師も招いて、なるべく広く体系的に、放射線に関する科学的知識を身につけ、定性的および定量的に正しく判断する能力を養うことを目的とする。講義は理科生を主な対象とするが、意欲のある文科生も歓迎したい。
日時:金曜5限 (1/10 は火曜だが振替日)
場所:駒場キャンパス 11号館 1101教室
講義内容:
- 10/ 7 前半ガイダンス、後半【鳥居】放射線入門(放射線とは、身の回りの放射線)
- 10/14 【鳥居】放射線物理学(放射線の物質との相互作用、エネルギー付与)
- 10/21 【小豆川】放射線計測学(放射線の測定原理・方法・問題点)
- 10/28 【小豆川】環境放射化学(実際の環境中の放射線量と解釈の問題点)
- 11/ 4 【渡邊】放射線生物学(放射線の生体への影響、放射線防護)
- 11/11 【中川恵一:医学部附属病院放射線科】放射線医学(放射線被曝・放射線医療)
- 11/18 【鳥居】原子核物理学(放射能とは、原子核構造・核壊変・核分裂)
- 12/ 2 【石渡祐樹:工学系原子力国際専攻】原子力工学(原子力発電、エネルギー利用)
- 12/ 9 【鳥居】放射線物理学(エネルギー損失過程の定式化、線量計算、原子物理学)
- 12/16 【小豆川】環境放射化学(予想される今後の放射線量の推移)
- 1/10 【藤原徹:農学部応用生命化学】植物栄養・土壌肥料学(放射性物質の植物への吸収)
- 1/20 【渡邊】放射線の利用(育種、滅菌、工学応用など)
- 1/27 【鳥居】加速器科学、放射線科学のまとめ
レポート課題:
- 化学分野レポート課題(小豆川)
- 第3回・第10回の講義スライドに掲載。いずれかを選択。両方提出してもよい。
- (締め切り:12月22日(木)までに16号館102号室の鳥居まで持参。)
- 生命科学分野レポート課題(渡邊・中川・藤原)
- いずれか1つ(またはそれ以上)を選択。
- 渡邊:低線量の被曝が生物に与える影響について述べなさい。
- 中川:チェルノブイリと広島で起こったことの違いを列挙せよ。
- 藤原:第11回の講義スライドに掲載。
- (締め切り:1月20日(金)までの授業時間に提出。)
講師紹介:
- 鳥居 寛之(東京大学教養学部物理部会):専門は粒子線物理学・原子物理学。加速器施設にて反陽子ビームを使った基礎物理学の実験研究をしている。駒場前期教育では、基礎物理学実験を担当。特に物理実験学入門講義&実習の総責任者。2011年度夏学期に自主講義「放射線学」を開講。
- 小豆川 勝見(東京大学教養学部化学部会):専門は環境放射化学。3月以来、土壌中の放射性核種の同定に奔走している。4月には福島第一原発正門前での土壌採取も行った。駒場前期教育では、基礎化学実験を担当。
- 渡邊 雄一郎(東京大学教養学部生物部会・教養教育高度化機構):専門は生命環境応答学。放射線取扱主任者として、駒場キャンパスにおける放射線同位体施設の管理総責任者。
- 中川 恵一(東京大学医学部附属病院放射線科):専門は放射線治療。専門医師や医学物理士を含む放射線医療チームを率いてガン治療に当たっている。原発事故以来、team nakagawa として、放射線の人体への影響についてツイッターなどで精力的に情報発信を続けていることは有名。
- 石渡 祐樹(東京大学工学系原子力国際専攻):専門は原子力エネルギー、原子炉工学。計算機シミュレーションを駆使して原子炉内での現象を解析するとともに、新型原子炉の研究開発を進めている。
- 藤原 徹(東京大学農学部応用生命化学):専門は植物栄養・肥料学。今回は、放射性物質のセシウムが土壌からいかに植物へ吸収されるか、それを調べるトレーサー実験についてお話し頂く。
ゲスト講師として予定していた江田和由氏(文部科学省原子力保安検査官)が担当できなくなったため、授業予定を一部変更しました。
関連講義 ★ 2013年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
★ 2012年度冬学期:主題科目テーマ講義「放射線を科学的に理解する」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡邊雄一郎ほか)
★ 2011年度夏学期:自主講義「放射線学」(鳥居寛之)
関連書籍 ★ 書籍「放射線を科学的に理解する ― 基礎からわかる東大教養の講義」
(鳥居寛之・小豆川勝見・渡辺雄一郎 著、中川恵一 執筆協力) 丸善出版:2012年10月10日刊行!
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総括担当教員(鳥居)への問い合わせ先
電子メイル torii-radio@radphys4.c.u-tokyo.ac.jp
このページの URL: http://radphys4.c.u-tokyo.ac.jp/~torii/lecture/radiolect11W.html
Last modified on 2014/1/22