ヴェローナ野外オペラ

 一般にオペラのシーズンは9月から6、7月まで。夏の間はやってないんです。でも、この期間、音楽祭として各地で趣向を凝らしたオペラ上演やコンサートが開かれます。ヨーロッパで特に有名なのは、ザルツブルグ音楽祭(オーストリア)、ブレゲンツ湖上オペラ(同)、ヴェローナ野外オペラ(伊)、ルツェルン音楽祭(スイス)、それからワグネリアンにはバイロイト音楽祭(独)。他にも オランジュ(仏)、ラヴェンナ(伊)、イギリスなどでもやっています。
レベルも通常の演奏より高いことが多く、ウィーンフィルだったり、ムーティーやアバドが振ったり、ドミンゴがガーラ演奏をやったりします。もちろん、その分値段が高くなり、いい席は2−3万円と言ったところでしょうか。予約も少なくとも2カ月前には済ませておきたいところ。日本からは代理業者に頼むと手数料が 高い上に席の細かい希望が言えないので、FAXや、最近ではWWWで、直接手配する方がお奨めです。

1994年体験記

 ジュネーヴに着く前に、5日間ほど北イタリアを旅行してきました。なかでもヴェローナでは二晩連続で野外オペラを楽しんできました。ここにはローマ時代のコロッセオがほぼ完全な形で残っており、そこで毎年夏にオペラが催されるのです。夜9時になるとアリーナ(コロッセオ)内の照明が落ち、薄暗くなりかけた夜空の下客席に蝋燭の火が灯される中 序曲が鳴り始めます。2万人収容できる野外アリーナだけあって舞台のセットは非常にスケールが大きく、また年代を感じさせる大理石造りは完璧なまでの音響空間を作り出しています。

 聴いたのはベッリーニのノルマとヴェルディーのアイーダ。指揮者は各々 Gustav Kuhn に Nello Santi でした。ノルマではソプラノの Elizabeth Connell が堂々たる貫禄で high-C の多発する超難しいアリアを立派に歌い上げ、アイーダはエジプト王の Alfredo Zanazzo(バス)やラダメス Lando Bartolini(テノール)のベルカントはいい勉強になったし、アイーダのソプラノ Pauletta de Vaughn も転がすようなコロラトゥーラが見事。少々値が張りましたが最高にいい席で聞くことが出来、堪能してきました。

(いくら本場と言えどもこのような音楽祭では通常期のように数千円と言う訳にはいかない、あ、いや、上の段の自由席(特別に安い)はそれでも 3万リラ=2千円 でした。それに比べると、今度9月・10月に日本で大々的に公演するウィーン国立歌劇場がS席6万円と言うのは、確かにそれだけのセットやらを飛行機で運んだりするのに莫大なお金が掛かるにしても、やはり異常に高すぎますよね。ところで、ウィーンから引っ越し公演が来るのは、今年オペラハウスが修復工事をするからで、そのためウィーンでのオペラシーズンは例年より3ヶ月短縮されて12月からになるのです。休みの間に日本に出向いて行って金稼ぎをしようということでしょうか。)

1996年体験記

 8月5、6日と、北イタリアのヴェローナ(ミラノとヴェネツィアの中間) で野外オペラを見てきました。
 会場は、紀元1世紀に造られたローマ時代のコロッセオ。ローマのものより ひと、ふた周り小さいのですが、ぼろぼろに崩れたローマとは違い、大理石でできた 階段状の観客席など、(一番外側を除いて)ほぼ完全な形で残っているのです。 オープンエアーですが、石でできたアリーナはとても音響がよく、一角の階段を ふんだんに使った大がかりな舞台は、ヴェルディーを中心としたスケールの大きい オペラに向いています。

 お奨めの席は、階段席の5段目くらい。番号が付いている指定席(Poltronicina numerata di gradinata)で約16万リラ(100リラ=約7円;前売り追加料金を含む。 プレミエやガーラのときは若干高くなる)、ステージの横だと舞台にも近いし、 声もよく響いてセットもダイナミックに見え、最高です。ステージに近すぎるのも よくありませんが、ステージを正面に見る席も(楕円形のアリーナの長径で 反対側だから)遠くてあんまり。また、日本人の多い平戸間席も、 広い舞台の立体感がつかめず、窮屈なので、値段が高いだけ(前半分27万、 後半分19万リラ)でお奨めできません。階段の上の方(Gradinata)は4万リラと 安いけれど、自由席なので、良い場所を確保するには当日開演3時間前から 並ばないといけません。

 さて、開会初日(プレミエ)、ビゼーのカルメン。私が1年生だった初めての 第30回の定演で「オペラ合唱曲ステージ」をやり、カルメンの「闘牛士の歌」を 歌ったので思い入れがあります。
 ところが、なんたること、開演の9時15分が近づくや、真っ白に覆われてしまった 空からぽつりぽつりと雨粒が。少量の雨でも楽器が傷むので、という度々の4ヶ国語 (伊・独・仏・英)による場内アナウンスのあと、降ったり止んだりする雨にやきもき しながら待つこと1時間半。やっと始まったかと思うと序曲だけ演奏した後 またオケが引っ込んでしまう有り様。1時間後に再開し、何とか1幕を消化したものの、 カルメンのメゾなんかいい雰囲気で歌っているのに、こっちは空を気にしながらで どうも落ちつかない。一幕終わって、時既に12時半。しかも幕間は25分もあるとか。 さて、今晩は長期戦、4幕終わる頃には3時か、と思ったところで、また ザーっと来た。結局この日は残り中止になってしまいました。 既にいくらかは演奏したので1万2千円のチケットは払い戻しもなし。 空模様だけには勝てません。夏の北イタリアなんて、普段はいつも快晴なのに。

 翌日、ヴェルディーのナブッコ。こちらは6月の時点でチケットが売り切れだった のでダフ屋のおじさんから前日に買ったもの。4割増し位だったが、比較的 良心的な方でしょう。ところで、開始1時間前の急な夕立は、私が天に怒鳴りつけたら からりと晴れた。(昨日は天に「祈る気持ち」だったのに、さすがに二日も続くと 怒りたくなる。)で、舞台も完璧でした。3幕2場のイタリアの第二の国歌といわれる 「行け、我が思いよ、黄金の翼に乗って Va pensiero, sull'ali dorate」 は、隣のドイツ人夫妻が蝋燭をくれて、揺れる炎の中に力強い合唱を聴いたのでした。

ヴェローナは、観客の灯す蝋燭が有名なのです。開演後程なく日の暮れた夜の 薄明かりにかげらう灯の何と幻想的なことよ。

さらに、なんと、場内の拍手喝采に答えて、もう一度、アンコール。 すかさず大声で "YES!!" とか叫んだアメリカ人(多分)は、すぐさま みんなから "シーッ" と注意されたりしていましたが(あーあ、いかにも)、 とにかく会場の静かな緊張の中、私は感動に背筋が震える思いでした。
 終演は午前1時15分。その後 軽くパスタとイタリアンジェラートを食べ、 ナポリ行きの夜行列車に飛び乗ったのでした。



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