ロンドンではコヴェントガーデン・ロイヤルオペラハウスで「椿姫 La Traviata」を見てきました。10日ほど前に電話で問い合わせたところ、一番高い £120 の席しか残っていないと言うことで(£1=約¥170)、当日券なら座席の一部を確保してあり、当日朝10時から売り出すということだったので、それを手に入れることにしたのでした。
さて、当日、前日に泊まったほとんどドミトリーみたいな宿が良くなかったので別の宿を探して重い荷物を移動などしているうちにすっかり遅くなってしまい、チケット売場に着いた頃には11時近くなっていました。かろうじて天井桟敷 Amphitheatreの一番後ろの席(£29)が一つだけ空いていると言われたけれど、 あまり良い席ではないし、キャンセル待ちも結構可能性があるだろうと言われたのでまたしばらくして来ることにしました。ジュネーヴなどでは開演1時間前くらいから並べば当日のキャンセルが結構出てくるものなので、まあ時間がなくて途中で 売場を覗きに来られなくても、開演前に来ればなんとかチケットは手にはいるだろうと高をくくっていたのでした。
日中、街を観光しているうちあっと言う間に時は過ぎ、特にウエストミンスター寺院の聖歌隊のミサなどに聞き入っているうちに夕方になってしまったので、慌ててホテルに戻ってネクタイ姿に着替え、劇場に着いたのは結局開演7時の直前。 (「いくらなんでもこれでは売り切れかもなあ。」)
売場には10人ほどがいたが、もうリターンチケットもなくなった雰囲気。係りの人が「もうありませんからお帰り下さい」などと説明。一人が「そこにある数枚のチケットは何だ」と聞いたが、「この予約券は前払いされているので、 売ることはできない」との返答。でもここであきらめてはいけません。
程なくして2枚のリターンが出てきた。前に並んでいたスペイン人らしい夫婦が買おうとすると、横の夫婦が「我々が先だ!」。窓口の人:「でもこの人達は さっきからずっとここにいましたよ」「我々は3時間前から表で並んでいる。隣のこの人達もそうだ。彼らはここほんの15分、20分前に来たばかりではないか。」口論の末、スペイン人に優先権が与えられたようで、しかし1枚当たり£65と知って彼らは断念。そして文句を付けた夫婦が£130を払って急ぎ足で階段を上っていった。
さすがに2時間・3時間などと言われると、5分前に来たばかりの私などは黙って静観しているより他はない。このころにはみんな諦めて帰ったので、 売場の前にはスペイン人を含め5人くらいになっていた。
やはりちょっと無理だったかなあと思いながらも、まだ諦めきれずにいると、なんと先ほどの夫婦が戻ってきた。「もう幕が開いてしまって、中に入れない。幕間まで1時間も待ってられないから、これは返す」と言って払い戻し。そこにすかさず、「あ、それ買います」と言って潜り込んだのが私と横にいたカナダ人の男性。周りに文句言う人もなし−−というわけで、ちゃっかりバルコンの1列目のいい席を手にいれたのでした。なんとラッキーだったことよ。
ここで格言。「最後まで粘れば、チケットは必ず手に入る」
(ただし何人かで連れ立っていく場合には確率が下がります。)
3幕あるオペラのうち、1幕目は実はたった35分。有名な「乾杯の歌」などはテレビで見ることになりましたが、遅れてきた人にはドリンク券をサービスしてくれるシステムのようで、1杯のワインを片手に幕間を待ったのでした。
さて、オペラの方は、しっかりとしたロシア人のバリトン、とても甘い声の 若いテノール、そしてヒロインのソプラノは何とも美しい歌声の新人。 ギリシャ人の両親の間にカザフスタンに生まれ、アルマアタ音楽院の卒業。ギリシャなどで3、4年舞台に立っていたようだが、その他ではこの5月にロイヤルオペラでドン=カルロスの「天の声」役を歌ったのが最初で、舞台役は今回が初デビュー。そしていきなりタイロルロール。それがまたなんとも素晴らしい舞台だったのです。
イギリスで見ることの利点だと思ったのは、字幕が英語で出てくれること。すると歌と同時に言葉の内容がよく分かるので、感情移入がしやすい。 最後はもう涙もので大感動でした。
オペラが終わってから、ふと見ると、脇の出口の前に15人ほど集まっている。何事かと思って立ち止まると、楽屋口。そうか、折角だからサインをもらおう、というわけでしばらく待っていて、結局メインの3人とももらってしまった。 (はは、ミーハーだなあ。)横にいた日本人のお姉さん(30近い?)が、「あなた、今日ほいと来てこんなにいい演奏に巡り会えるなんて、本っ当にラッキーなんだからね!」と強調していた。前の演目の Nabucco なんかはめちゃくちゃだったとか。 (その人は4月から滞在していて、「4、5年は頑張ろうと思っています」と言っていたから、きっと(独身の)キャリアレディーなんだろうなあ。)
ところで、そのお姉さんは数日前にも全く同じ演目の、同じキャストの演奏に来て、これはいいということでもう一回聴きに来たのだとか。それで、その新人のソプラノに花束を贈って、それが楽屋入り口に置いてあったので舞い上がっていたのでした。サインをもらうとき、お花のことを言うと、ソプラノ歌手は感激してお姉さんと抱き合っていましたが、そのなんとかわいい顔だこと。おそらくデビューしたてだから私と同い年くらいかも知れません。これは期待の新人でしょう! その後買ったWhat's On 誌(ぴあみたいな情報誌)でも絶賛されていました。美人だから、バルトリみたいにそのうちファンクラブもできてしまうかも知れませんね。彼女の名前は、Elena Kelessidi。注目しましょう。
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