ヨーロッパの気候が冷涼なのはよく知られたこと。例えばミラノは稚内と緯度が同じなのだが、暖流のおかげで北海道よりは温暖である。夏はどこも日中の気温は高くなり、近年は30度を越えることも珍しくない。湿気がないのでクーラーなどなくても快適で、木陰や屋内に入ると涼しささえ感じるのが特徴的。湿度が高く、空気自体が重くじっとりとしている日本の夏とはかなり違う。その代わり、太陽がとても眩しい。おそらく湿度がないぶんだけ日光が大気で吸収されずに直接地表まで届くからなのだろうが、あちらの太陽は「じりじり」照りつける。日本の「ぎらぎら」とした日射しと対照的だ。そんな日射の下、人々は競うように海岸へヴァカンスに出かけ、或いは近くのプールに通い、砂浜や芝生に寝ころんで肌を焦がす。それもこれも、短い夏を謳歌するためなのだ。ジュネーヴでは、だいたい8月も中旬を過ぎると一気に秋の気配が忍び寄り、9月に入ったとたんに涼しく、いや寒くなってくる。東京との気温差が一番激しいのは意外にも9月だと私は感じているが、東京で最高30度、最低25度の残暑に苦しんでいる9月中旬、ジュネーヴでは最高15度、最低7度などであり、下旬にはもはやジャケットやオーバーコートが必要になったりする。しかし同じヨーロッパでも、アルプスの北と南とではかなり気候に差がある。特に夏の期間の長さと冬の気温が違い、9月下旬でもイタリアのヴェネツィアなどではみんな半袖で、湿気の多い暑さを感じていたりするのである。
そして秋。葡萄の収穫。早い黄葉、紅葉。東京より2ヶ月くらい早く秋は深まる。
ヨーロッパの冬は寒い。そして暗い。どんよりとした雲が来る日も来る日も天を覆っていて、人々は憂鬱な気分に耐えなくてはならない。日本で2年を過ごしたドイツ人が、冬の東京の晴天が印象的だったと語っていた。あんな天気はヨーロッパではあり得ないのである。(尤も日本海側の方も同じ気持ちなのかもしれないが。)幸いにしてジュネーヴはレマン湖のおかげで冬でも比較的温暖で、雪も年に数回しか降らない。根雪が市街地では氷のように固まっているドイツなどとはかなりの違いである。
春。本格的な春の訪れは5月。野の花が一斉に咲き乱れる。名もない雑草が、たんぽぽが、りんごやマロニエなどの木々が、一斉に花を咲かせる。世の中が一気に明るく、暖かくなる。そしてまた、つかの間の夏がやってくる。
関連文書: CERNでの実験と生活の様子、CERNの四季、日射しと光、カフェとすずめ
書籍紹介: スイス四季暦(春夏編・秋冬編)東京書籍、松永尚三/さかもとふさ