バラの谷にあるカザンラック(またはカザンルック、実際の発音はラックとルックの中間のような曖昧母音)村でのお祭りは、本来地元の小さなお祭りのようですが、こういうロマンチックで素朴なフェスティバル好きの東洋人が結構たくさんいました。特に、民族衣装を着た地元の人たちがバラ園で実際に花の摘み取りをするイベントは、朝早く、また村のはずれの分かりにくい場所で行われたこともあってか、総勢200人ほどしかいない参加者の中で、3台の観光バスで乗り付けた日本人・韓国人らのグループが目立っているほどでした。(海外協力隊で現地の人にパソコンを教える仕事をしている若い日本人女性に会ったりもしました。)ただし、村の中心の広場で行われた仮装パレードや踊りなどはもっと大勢の観光客でごった返していました。
そもそも、首都ソフィアに向かうモスクワからのアエロフロートロシア航空の飛行機で一緒だった数人の日本人は、ソフィアの友人を訪ねるという一人を除いて、みなバラ祭りが目当ての人でした。そうでもなけりゃブルガリアに行く日本人なんてほとんどいないのでしょう。(もちろんビザが要りますよ。)うち一人の中年男性は祭りを取材に行くのだと言っていました(結局その方とはカザンラックで同じ宿でした)。
宿はさすがにどこも一杯らしく、でもソフィアの先生(ブルガリアには学会の目的で行ったのです。ちょうど時期が一致したので祭りにも行けたというわけ。)に頼んで、知り合いに聞いてもらってなんとか空きを見つけてもらうことができたのでした。
私が訪れた98年は5月下旬からやっていて、6月最初の週末がクライマックス&フィナーレでしたが、年によって日程は若干前後するでしょうから、ご自分で情報を探して下さい。2年前は現地のホームページもほとんど情報がなかったのですが、今頃はひょっとするともう少し増えているかもしれません。
さて、カザンラックへは当然鉄道で行ったのですが、これがまた一苦労。なにせ時刻表を理解するのが大変。ソフィア中央駅で、上の方に大きなパネルに掲示してある時刻表とにらめっこすること1時間以上。語学好きの私は大学の教養課程でロシア語をまじめに勉強したつもりなのでキリル文字は読めるのですが、それでもなにやらごちゃごちゃとブルガリア語で書いてある注釈の意味がわからない。そもそも、ブルガリアの詳しい地理が分かっていないので、どこどこ行きと書いてあっても、それが果たしてカザンラックを通る路線なのかを理解するまでが大変。おまけに、どうやら時刻表は毎週の様に変わっているらしく、壁には「今週と来週の変更列車一覧」などという張り紙がしてあったりして、まるでわけがわからない。ともかく仕方ないので必要そうなところを書き取って帰り、英語を話す宿の人に説明してもらいました。
で、結論から言うと、私が旅行したその日に限って言えば、朝の7時くらいの後には午後4時まで全くない。それから夜に1便だったか、そんな程度。朝10時くらいにあるとおぼしき列車は金曜のみ運行とかで、結局、いろいろ考えた末、午前中に別の路線でプロブディフに行ってそこを観光した後、南北に走るローカル列車でカルロボに行き、運良くソフィアを4時に出た列車に待ち合わせできて無事夕刻にカザンラックに着いたという次第。プロブディフ到着時にもちろんカルロボ行きの時刻は調べておいた(といってもほとんど本数がない、あ、ただし、直通バスは毎時にあった)のですが、そこから先の時刻表なんて分かるはずもなく(勘で予想していたとは言え)、あんな状況でまあよく幸運にもうまい接続列車があったものです。
まあ、いずれにせよ余裕をもって日程を組まれるに越したことはないでしょう。ところで、現地の旅館で夕食を相席した日本人の中年ご夫婦はつわもので、宿も取らずになんとかなるや、でカザンラックに到着、駅の近くで土地の人を捕まえて、英語も通じないのにひたすらホテルをなんとかしたいとわめいているところに英語も話す親日派の女性が通りかかり、その知り合いの紹介でなんとか小さな部屋を都合してもらったのだとか。「どうしても宿がなかったら引き返して別の町で泊まるつもりだった」とおっしゃるが、実は夫婦の到着した午後7時の列車はその日の終電。重いトランクはソフィア駅の荷物預かり所に置いてリュックで1週間くらいいろんな町を廻っていると言うから、相当旅慣れた方のようでしたが、やはり強引に頑張る気力があればなんとかなるものかもしれないと感心しました。
で、夫婦の出会った若い女性というのは、お父様が当地のバラ研究所の研究員で、20年程前に日本に行ったときの話を聞かされているのだとか。それが親日派のわけ。結局滞在した二日とも彼女の案内でご夫婦と4人で祭りを楽しむことができました。お世話になったので、毎食事の際には日本人で割って支払いをしたのですが、なにせブルガリアは物価が日本の10分の1くらいで、ロシア人でさえ驚く安さですから、それくらい、ね。
ブルガリアの食事ですが、凝った料理はあまりないかもしれませんが、なにせ素材が新鮮で(6月の野菜はひたすらトマトとキュウリばかりだが、これに刻んだチーズをまぶしたのショプスカサラダは典型的料理)どれもおいしい。ヨーグルトベースのタラトールスープもいいし、なんといってもあつあつのカバルマ。豚肉と野菜を煮込んであって、タマネギの香りととろとろの卵で絶妙な味わい。詳しくは「地球の歩き方」を見て下さい。ただし、ホームページにも書きましたが、この本は間違いが多いので、旅行情報をあまり鵜呑みにしないようにご注意下さい。
ええっと、調子に乗っていろいろ書いてしまいましたが、とりあえずはそんなところでしょうか。それから、カザンラックでバラの香油入りのちっちゃな木工細工はいいお土産になりますよ。(ソフィアでも売っているけど、それよりももっと安く買えるし、なにせ本場ですから。)
関連文書: 欧州写真紀行:ブルガリア
書籍紹介: 「地球の歩き方」ブルガリア・ルーマニア編、ダイアモンド社
(ただし、結構間違いが多いので、実際に旅行するときはご注意。)