海はなぜ青いのか

水の話です。

Aさん>
すごく疑問だったのですが、どうして氷河は青いんでしょうか? 僕が見た氷河は遠くで見ても近くで見ても、とっても青かったんです。そのとき思ったのが、いくら氷の結晶が成長しても、光を吸収するようなことはないでしょうから、結晶サイズが短波長の光を散乱してるのかな(空の青みたいに)...と思ったのですが、いまいち嘘臭いです。

興味があったので調べてみました。どんぴしゃのページがありました。専門外の人にも分かるようにかかれています。英文なのですが、"Why is water blue?" というタイトルで、

 http://www.dartmouth.edu/~etrnsfer/water.html

です。

それによると、海が青いのは、空が青いのと同じく散乱によるものだ、

空が青いのは、日光が大気中の微粒子でレイリー散乱されるためで、波長の短い青い光ほど散乱されやすいので散乱光が青い空となって見えるのに対し、散乱されずに残った光が朝夕の真っ赤な空として見える、ということです。
http://www2.age.ne.jp/~toshinao/vague/physics/index.html
http://www.srs.ne.jp/~north/text/misc/e29.html

と思っている人が多いが、実は違う、というのです。しかも、この論文が 1993年であることからして、そのことが分かってきたのは実はかなり最近のことなのかもしれません。
 あるいは、海の中の不純物による色? 例えば Cu 2+ とか。いかにもほんとっぽいけど、残念ながらそれも本質的な理由ではないのだそうです。では何かというと、「水 H2O 自体が赤い光を吸収するので透過光が青色に見える」というのです。

水が近赤外に吸収を持つのは知られているが、実験の結果、660 nm と 605 nm(赤色です)に弱い吸収が観測され、3メートルの水の筒の中で透過率は 44% しかない。これらの吸収は OH 基の高次の振動に由来するが、重水 D2O では吸収帯が赤外にしかないので無色透明に見える。

と書かれてあり、気体(蒸気)との比較で吸収が赤方偏移することや液体であれば温度による違いがほとんどないこと、そして氷についても言及しています。

で、実際のところ海が青いのは、海の表面による空の光の反射と、上に述べられたように赤が吸収されて青が残った透過光が水の中の物質に散乱され、あるいは散乱の過程でより緑色に偏移して目に届く光とが混ざっている、という結論のようです。
 氷や雪の場合は、結晶や隙間の空気による多重散乱と、水分子による赤色光の吸収とが複雑に絡み合って濃い青になる、という理屈を詳細に研究した別の論文が引用されています。

なんとも、海のあの深い青は、iMac(アイマック)のボンダイブルーは、はたまたイタリアのティレニア海カプリ島の青の洞窟の青写真)は、物理学的にも神秘的な「青」なのですね。


Oさん>
以前、オーストラリアかどっかからπwaterの研究について問い合わせがあったときはびびってしまった;-0 そんなもの知らないけど水のクラスタ構造は測ってみたい気がする。日本酒の味と関係があるというのは本当でしょうか???

水は一番身近な存在でいて分かっていないことが多い不思議な液体ですね。急に話が飛びますけれど、霊感のある人の中には、それが魔法の水を作る霊力というような、水に関わる力である場合がかなり多いのも、水の不思議な性質と何か関係があるのかもしれません。実は春に、私のホームページを見たという人から電話があって、奥さんがある霊力を持つようになって、水に気を入れると体にいい水になるのだが、相談に乗って欲しい、と言われ、興味半分で大学に来てもらうことを承諾して話を聞いたのですが、これとて物理をやっている私としては「科学的ではないけれども、生物または人の体のことを知らないので否定もできない」と答えるにとどまりました。ただ、先方が考えていたニュートリノとの関連は否定しましたけど。

でも、同僚の助手の人は、「いや、それはありうる。だいたい生命の鍵は水が握っているのだ、生命は、DNAは水に全てのヒントが隠されている。私は実は将来は水の研究をやりたい、と密かに思っている」、なんて言うんです。物理屋さんにそんなことを真剣に言われたので、私もひょっとしたらそうかなあ、などという気になってきました。

 以上、水のお話でした。では。



鳥居のホームページに戻る