白ばら会第36回(1995年)定期演奏会感想

 いやあ、定演というものは何度乗ってもいいもんです。愛弟子の代の一昨年が乗れなかったから6回目。そのなかで一番体力を消耗した定演でした。ああ、緊張したぁ。足はがくがく、腰にもきました。(といったら年かなあ。でも長老は口を揃えてそう言っていた。...やっぱり年かなあ。)

 Brahms は歌っていてびっくりするくらい本当にうまかった。それと比較をするのであれば、2・3ステはもう少し上にいけたかもしれないとも思えますが、それでも赤羽さんに満足して頂けるだけの演奏ができたのは、やはり白ばらも年々そこまで向上してきたという証なのでしょうね。ともかく、本番が当然のように一番うまく歌えるという底力はやはり凄い。

 気になった入場者数も1500を越え、満足しています。

 いろいろ話を聞いていると、A Boy Was Born は歌っていた側の(、そして練習中から何回か聞いていた身内のひとの)印象以上にお客さんの評価が高かったようですね。(あ、これは個人的な感想。アンケートは読んでないから違う意見も結構あったかも。)研究室の人からも「とてもよかった。声が"楽器"みたいだったね。」とか、丁度来日したスイスでの同僚(イギリス人のおじ(い)さんで、本人もアマチュアのオケでチェロを弾く)からも「声でああいう音楽がつくれるんだねえ。」("I was impressedby how you do the things like Britten with your voice, you know,without any instruments like an orchestra.")とか言われて、合唱家としては非常に嬉しい言葉でした。

 もっとも、あの曲自体が相当に器楽的要素を含んでいるとは思います。実は、定演直前の日曜日、練習のあとの、おしゃれに変身して久しい「イタリアンレストラン・バンビ茗荷谷駅裏店」で「あの曲のオケバージョンを作ったら楽しそう」とか言って盛り上がっていたのです。

 僕が A Boy Was Born を初めてテープで聞いた時にはなんかぼわーっとして何も見えなくて最初と最後以外は退屈な曲だとか思って、選曲でも避けたいなどと思っていたので、その後練習して歌う側としての曲の醍醐味を知って好きになっていたものの、きっと観客はつまらんと思うだろうなと予想していた訳です。でも(合唱をやっている人でない)友人達の反響は「とてもきれいで面白かった」とのこと。うむ、よかった、良かった。

 初めて聞く人には、8声ポリプフォニーの威力と異国日本趣味的なリズムの印象が強く、歌った当人達の気にしている細かいアラまでは聞き分けられなかったということなのかも。むしろ、何かをやろうとしている全体的な曲作り、表情をうまく伝えられたということかも知れません。(暗譜しようとすれば、必然的に感覚に染み込ませて覚えなければとても憶え切れるものではなかったという曲の難しさにもよるのでしょう。)ある先輩が次のように評価して下さっているのには感激です。

 アンケートにも書いたのですが、私は今まで"The Three Kings"のみをBritten流の東洋調と受け止め、.........(中略)................前半は最上川舟歌を思わず思い出したし後半は秋祭りではっぴを着たクマさんの踊りを見ている錯覚に陥りました。演奏に感銘を受けたことももちろんですが、興味深い経験をさせていただいたことにも感謝しています。

 ちょっと自画自賛し過ぎですが、とにかく最後の Noel を叫んだ後は、もはや体力が残っていなかった。クマさんにはあと3回くらい出入りしてもらいたかった。すぐに夜の歌に移行しろったって、とても歌える体制じゃなかったぜぃ。先輩のおっしゃる通り、あの時は「夜の歌」いらないとすら思いましたから。

Noel!"のあとの一瞬の残響がなんともいえないです。

 これはみんな「昇天してしまいました」というのがばれてしまう残響であった。(あっ!)と思ったけど、「昇天」の方が大事だもんね。

ところで、別の先輩のお便り:

 去年の演奏会を聞いて、クマさんが毎年言っていた「息の流れ」と「音楽の流れ」の一致、みたいなものがなんらか形になって見えて来はじめた、そんな予感のようなものがあって、今年の定期演奏会にはすごく期待していたのですが・・・聞きにいけなくてほんとにごめんなさい。成功を確信しています。

芸術家の考えることは我々ぼーっとした団員の思考より常に一歩先を行っていて、クマさんによれば白ばらは今年を転機に「パワーの時代」へと突入していくつもりだそうです(日本語が変)。しかもこれはここ数年考えていたことだそうで。ここ数年といえば「第三期応用編」の真っ只中ではないか。(その意味は投稿文「第三期という時代」をお読み下さい。)「ゲリラ路線」「正規軍」「第三期」に続く第4期「パワー」時代の幕開けといえるでしょうか。今年のパンフのクマさん原稿のタイトルは「ピーマンの肉詰め」でした。今後にも乞うご期待。(などと長老のくせに無責任な発言?、いや、来年幹部へのハッパです。)

 みなさん、お疲れ様、そしてありがとうございました。



関連文書: 白ばら会第三期(投稿文)
リンク先 東京大学白ばら会合唱団ホームページ音楽リンクのリスト


鳥居の音楽メインページに戻る
鳥居のホームページに戻る