四次元の世界

今まで一般的にこの世界は3次元だと言われてきましたが、最近、素粒子関係の学者さんの間で、この世界は4次元だ。と言われていると聞きました。物理はまったくの素人ですが、こう言ったことには興味を持っているので、わかりやすい解説をしてもらえると幸いです。

4次元だといわれているのは最近ではなくて、もう何十年も前からのことです。とはいっても、空間はあくまで3次元で、4番目の次元として「時間」をもってくるというものです。あわせて時間と空間を統一的に扱って「時空」といいます。

 我々の日常では時間は万人に共通に流れるもので、空間とは似てもにつかぬもののように思えますが、これが光速に近いスピードで運動する系(将来の宇宙船や、あるいは高エネルギーの素粒子等)では正しくなくなります。ことの始まりは、光の速度は(真空中では)誰からみても常に一定であること。つまり、地球上にいる人にとっても、進んで行く光を追いかける人にとっても、また光に向かっていく人にとっても常に同じ速度なのです。我々の日常の常識だと、電車の中で進行方向にボールを投げると、それを地上でみている人にとってはボールの速度は電車の速度プラス車内でのボールの速度になって増えますが、ボールを投げる代わりに光を放つことをやると、光の速度は電車の速度プラス車内での光の速度、というふうな足し算にはならず、外からみても車内で測っても同じ速度になります。極端な事をいうと、光を光の速度で追いかけても、やはり光は光の速度で逃げて行くし、光に向かって光の速度で突進していっても、光は光の速度でしか進んで来ない、ということです。万物の速度は光速を越えない、という法則はここにも現われています。

 で、この非常識的な現象事実を説明する為に、かのアルバートアインシュタインは従来の時間と空間の概念を覆す理論(特殊相対性理論)を発表し、いまやその正しさは精密に検証され、物理学者として誰一人反論する人はいないのですが、その結果、超高速宇宙船内部の人にとっての時間と空間が、地球上の人にとっての時間と空間とはことなり、時間と空間がまざったり、距離が縮んだり時間がゆっくり進んだり、という不思議な事が起こることが分かったのです。もし、光の 99.5 %の速度で進むことのできる宇宙船ができたとすると、乗組員が5年かけて航行し、また5年かけて地球に帰還したとき、なんと地上では 100 年の歳月が流れてしまっている、という事態がおこるのです。過去に戻ることはできませんが、未来に旅行することは可能なのです。このことは、光速に近い速さで運動すれば、空間を移動するうちに時間を移動する事ができる、という言い方ができるでしょう。「時空を越える」と言ってもいいかもしれません。物理学的には、時間と空間は運動によってローレンツ変換という変換式で結びつける事ができて、これは数学的には3つの空間軸と、虚数の時間軸の間の、4次元時空における回転とみなすことができるのですが、難しい事はともかく、この世の中は以上のような理由で4次元だと言われています。

 詳しくは、講談社ブルーバックスシリーズをお読みになるのがいいでしょう。とくに、「四次元の世界」という本が最適です。既に古い本なので、書店になければ図書館を探してみて下さい。

 ところで、最近の理論物理学者は、世の中が10次元だとか、26次元かもしれないとか言っていますが、それは理論上都合がいいために導入されるもので、たとえば10次元の場合、そのうち6次元がまるまってしまって、実際に観測される「この」世の中は4次元だ、という説明をしているものです。これについてはブルーバックスの超弦(超ひも)理論などの本に解説があるでしょう。



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