ロシア紀行

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サラトフ

 学会で行ったロシアのサラトフはなかなかいい街でした。人口100万というから、ちょうど広島くらいの規模でしょうか。街をぶらぶら歩いて観光するのにも丁度いい大きさでした。

 モスクワの南東800キロ、飛行機で2時間弱(でも鉄道だと16時間かかる)。大河ヴォルガ河沿いの100万都市で、カザフスタン国境から200キロ、アジアとヨーロッパの交錯地といった感があり、街を行き交う人も白人ばかりではなく、アジア系の顔や、なかには日本人そっくりの顔もありました。街並みは、何十年も前に建てられたボロいアパートなどが並んでいる地区もあって、けして近代的ではないけれど、通りには沢山の人出があり、活気に溢れていました。6年前に訪れた混乱期のモスクワと違って、通りの至るところで行商というか、おそらく街外れの畑で取れたかぼちゃや西瓜、あるいは(鮮度はないけど)魚などを売るおばさんの姿が見かけられ、またアイスキャンディーの出店があったりと、昔の物不足の行列が嘘のようにロシアの再生と人々のたくましさを感じさせてくれました。

 物価はとっても安い。というか、彼らの月収もとても安い。なかなか生活も(貧するとは言わないけれど)大変なようです。ものの値段は、換算することに意味があるとすれば、大体日本よりひとけた安い、といったところでしょうか。ビール 500ml1瓶12ルーブル=50円を飲みつつ、街の広場を眺める。

 その日の夜はちょっとしたパーティーで、現地の学生らも沢山いていろいろ話したりしました。なんと物理や生物物理の学生(多くは大学院博士課程)のうち半分が女性なのです。で、ロシア人は初婚年齢が早い(10代だったりする)ので、多くは結婚していて、子供がいたりするのです。驚きました。

 3日目の夜は街のオペラハウスでバレエ「白鳥の湖」を観劇しました。サラトフの街はロシアで最初の国立大学、最初の音楽院が出来た文化的都市だそうで、現地の人に言わせれば「本当はここではバレエよりむしろオペラの方がいい」んだそうですが、それでも僕が見た白鳥の湖は感動的なものでした。実はバレエをちゃんと観劇するのは初めてに近いのですが、それでも特にヒロイン「オデット」の白鳥の舞は素人目にも突出して素晴らしく、表情や手の先の動きに至るまで、全身から伝わって来る感情表現にしびれたものです。オケも結構よくて、「情景」の曲は(小学校時代からの思い入れが強すぎたからか)ちょっと期待はずれの感があったのですが、全体的には弦が「鳴いて」いて、いい感じでした。

 会議の最終日の午後に研究所長の先生の丘の別荘(ダーチャ)に大勢で招待されてバーベキュー(シャシュリクという串焼き)を楽しんだり、次の日、土曜日にまた別の先生が河の中洲に自分で建てたというダーチャに行って家庭菜園の様子を見ると同時に、ボルガ河クルーズも楽しんだ、ということもあるのですが、あんまり遊んできたことばかり書くとまずいので、バレイの後にサラトフ国立農業工科大学の先生のお宅にお邪魔して、他の先生方といろいろ物理の議論をしてきたことを付け加えておきましょう。

 ところで、むこうの気候は思ったより暖かかったです。日中17度とか。それでもセーターか薄いコートを着ていましたけれど。例年では考えられない暖かさだそうで、鮮やかな黄色に染まった木々の葉っぱとあいまって、素敵な秋の小春日和でした。(ロシア語ではバビリェータ、女性の夏、と表現するそうです。)さすがにモスクワはもうちいと寒かったのですが。


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