平成18年度 東京大学総長賞 を
山崎研究室の高峰愛子が受賞



東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 山崎研究室 博士課程3年生(受賞当時)の高峰愛子が平成18年度 東京大学総長賞を受賞しました。
「東京大学総長賞」は、東京大学の学生を対象として、学業、課外活動、各種社会活動、大学間の国際交流等の各分野において、「優れた評価を受けた」 「優秀な成績を修めた」「本学の名誉を高めた」などの顕著な功績のあった個人又は団体に総長が表彰を行う、平成14年度から設けられている賞です。

近年、加速器技術の発達により広い範囲の不安定原子核を高強度で生成することが可能となってきました。 そういった不安定原子核の中には自然界に安定に存在する原子核には見られないような性質を持ったものも見つかり、 原子核ひいては物質とは何かについての描像が大きく展開されると期待され、不安定原子核物理の研究が盛んに行われています。 不安定原子核は原理的に高エネルギーで生成されますが、高峰らはそれを減速・冷却して低エネルギービームに変換し、 効率よく捕集する装置の開発を進めています。


破砕核分離器(理化学研究所のRIPSなど)から得られる高エネルギーの不安定核ビームを ヘリウムガスセル中で熱化させ、高周波イオンガイド法を用いて不安定核イオンをガスセルから引き出します。 現在、理化学研究所の新しい加速器施設RIビームファクトリーにて、この手法を用いたあらゆる元素の低エネルギー不安定核ビームを提供する施設の建設を進めています。

現行施設のRIPSにおいても、上記の手法で引き出したベリリウム不安定核の低エネルギービームを多重極イオンビームガイドで超高真空領域まで輸送してイオントラップ中に閉じ込め、 2005年秋にレーザー冷却と精密分光に成功しました。

この一連の流れをエネルギーの観点から見ますと、生成時には実に 1 GeV(温度に換算して10兆度)という高エネルギーであった不安定核を、 数eV(数万度)の低エネルギービームとして取り出し、 イオントラップ中に閉じ込めレーザー冷却させて0.1 meV(絶対温度1度)にまで冷却することに成功した事になります。 これはすなわち不安定核の温度を13桁も冷却したことになります。
低エネルギー不安定核ビームを用いる研究として、
  • イオントラップ中に閉じ込めた不安定核イオンの超精密レーザー分光
  • 多重反射型質量分析器を使った精密質量測定
  • 共線レーザー分光による荷電半径測定
など様々な実験を計画しておりますが、 現在は特にベリリウム不安定核イオンの原子的な遷移を超精密に分光することでベリリウム不安定核の中性子分布・陽子分布を電磁的なプローブを用いて調べる研究を進めています。

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